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僕は透明で柔らかな有機ガラスの枠線になりたかったのだ。
思い出した。

空のダンボール箱になりたいわけではない。

* * *

ただ自室で静止していると、空のダンボールの中でイメージが混ざり合って映像がちらつくことがあるだろう。
僕の目の前には、緩やかな下り坂の芝生が広がっていた。芝生や、霧がかった薄墨の空の下でどこまでも続く草原のようだ。

チャプターが切り替わり、僕はその緩やかな下り坂を、丸太のようにごろごろと転がっていた。俯瞰して見れば、酷く不恰好で鈍重な滑走だろう。けれど僕の視界はめまぐるしく回転し、世界と自分の比率が1:1になっていくように感じられる。

下り坂は徐々に角度を鋭くし、転がるスピードは勢いを増した。視界は世界と一体化し、事実として僕は丸太になった。その様子を空から俯瞰していると、丸太の行く手に一本の鉄の棒が立っていた。鉄の棒は鋭く研ぎ澄まされた刀身のようで、当然ように転がって来た丸太を真っ二つに切り裂いた。断面からは赤い血が少し出た。

丸太は二つになっても転がり続けたが、鉄の棒は増え続けて、2つが4つに、4つが8つに、だんだんと細切れになり、ついに僕の脳みそがあった部分も二つに割られた。その時の快感は忘れられない。

やがて転がる円盤のようになった僕は、草原の終わりにある国境のように延びるシュレッダーに滑り落ち、空高く機械音を響かせながらごりごりと切り刻まれた。


* * *

そうして、ちらちらと瞬いていたイメージが消え、ダンボールの中はまた空になった。
寒々しい風が茶色い紙肌をなでていく。あの快感が忘れらない。

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